<刊行によせて>

編集委員代表 武田 厚  

新しい造形芸術分野として誕生した現代ガラスの歴史は、まもなく半世紀を迎えようとしています。伝統を誇るチェコやスタジオ・グラス運動の起点となったアメリカはもとより、世界の各国で活躍する作家の数は益々増加の傾向にあり、それと同時に表現領域の拡張と多様化現象は顕著に進んでいます。このことは、ガラスという素材の魅力と造形の可能性を一層強く示すものであり、グラス・アートの未来の豊かさを物語る動向といえるでしょう。  

日本においてもガラス界の動きは活発で、とりわけ若い世代の台頭が著しく、その内容の充実振りが注目されます。それにはいくつかの要因がありますが、主たるものは教育機関の充実にあると思います。従来しばしば見られた短期間によるガラスの技術的な指導だけという教育は今日も見られますが、他方では、美術の総合的な教育を受ける場や機会が増えたことが上げられます。事実、それらの複数の教育機関で学んだ人々のその後の活動を見ると、多くが何らかの方法で自立し、フリーランス作家の道を選んで仕事を始めています。しかも彼等の仕事に見られる極めて自由かつ独創性に富んだ内容は、将来のガラス芸術の展開にとって大いに魅力あるものと思われます。戦後日本の現代ガラスを主導してきた一人である藤田喬平氏を始め、現代ガラスの草創期からこの分野の基板を作ってきた作家等の活動と合わせて、今後の日本のガラス芸術分野の発展が期待されます。  

ところで、こうしたガラス造形芸術の分野の活動を正しく把握するまとまった情報を、近年国内外で必要とされることが増えています。しかしながら、それに対応し得る資料やシステムは必ずしも十分とは言えない状況にあります。この度の「日本の現代ガラス作家」の出版は、そうした要望に応えるべき企画されたベーシックな事業の一つであり、一般専門を問わず、ガラスに関心を持つ広い層の人々に活用されることが望まれています。とりわけこの分野では必須と思われる国際交流において、それらが貴重なデータとして役立つことも念頭としています。出版と同時にインターネット上にも公開し、かつデータのリニュウアルを欠かさないこととしたのはそのためです。  

出版に当たっての旭硝子株式会社は、財政面における全面的責任のみならず、企画編集に関わるあらゆる事務、雑務を見事にこなしてくれました。またこの企画に快く同意しデータ提供に協力してくださった各作家、手弁当で編集に参画した各専門家の方々に対し、企画提案者の一人として深く感謝の意を表します。  

今後この基礎データの公開をより正確かつ有意義なものとするために、多くの方々のご支援とご協力をいただければ幸いと存じます。

(多摩美術大学客員教授)






「日本の現代ガラス作家」について

「日本の現代ガラス作家」は、書籍の形で発行されたものを再構成して掲載してあります。

「日本の現代ガラス作家」は、芸術としてガラス造形に携わる日本人および日本で活躍する作家を、広く日本国内だけでなく海外の方々にも知っていただくために編集したものです。そのような方々をすべてとりまとめることは非常に難しいため、編集委員会においてアートの視点から推薦できる方々を選びまとめました。初版で268名の個人作家を掲載しております。しかし、編集委員会ですべての方々をとらえ切れたとはいえませんし、新たにガラスアートへ取り組まれる有能な作家もおられるため、随時見直しを行うことを考えております。    

編集形式としては、海外のガラス関係者にも日本のガラス造形芸術の現状を知っていただくため和英併記としました。また、作家の方々に関するデータはすべてご本人から提出されたものを基本としています。このため、初版においては掲載内容がかなりばらついたものとなっております。今後、この初版をベースにさらに見やすく使いやすいものにしたいと考えています。    

今回、書籍の形では1000部を印刷しておりますが、書店等での販売は行いません。発行趣旨から 国内外のガラスアート関係者、美術館やギャラリー、また、掲載させていただいた作家の方々へ無償で配布いたします。    

書籍の形では配布先が限られてしまいますので、ガラスアート愛好者にも現代のガラスアートのすばらしさとどのような方が創作しているかを知っていただきたいこと、また、常にデータをアップデートし最新の情報を提供するため、このようにインターネット上にも公開いたしました。今後、このインターネット上でリニューアルを続けていく予定です。






「日本の現代ガラス作家」編集委員会
武田 厚   多摩美術大学客員教授  美術評論家
畠山 耕造  株式会社栄光教育文化研究所文化事業開発部・部長
水田 順子 北海道立近代美術館学芸部学芸第一課長
西村 公郎  株式会社アート社代表
吉本 由美子  ガラス造形家
稲村 義篤  元旭硝子株式会社